ども、薬剤師あー。です
今回はFTM
つまり体が女性で心が男性の方が
体を心の性にするべく治療として使われる
男性ホルモン注射についてです。
治療をするにあたってどういう変化が起こるの?
という気持ちと同時に
どういう副作用が起こるの?と気になってしまいますよね。
今回はその男性ホルモン注射治療の種類・変化と共に
副作用についても記載していきます。
私自身は男性ホルモン注射の
治療をしいていないので
男性ホルモン注射の
種類・変化・副作用を
薬学的、医学的な観点から情報をお伝えできればと思います。
- 薬剤師歴10数年
- LGBTQブロガー
- 未治療で埋没経験有
- パートナーと結婚式を挙げ
マイホーム購入経験有
【FTM】男性ホルモン注射の前に・・男性ホルモンとは
男性ホルモン
アンドロゲンと言われるステロイドホルモンです。
その中にテストステロン、ジヒドロテストステロン、
デヒドロエピアンドロストロン・・・等ありますが
主な作用を発揮するのはテストステロンです。
因みにニキビや脱毛など厄介な作用を起こすと
言われているのはジヒドロテストステロンです。
お次はその
テストステロンの作用の説明
テストステロン
- 筋肉の増大
- 骨格の発達
- 男性における第二次性徴に関わる
第二次性徴・・声変わり・髭や体毛、陰毛の増加・皮下分泌増加(ニキビ増加)等
女性でもテストステロンは分泌されてますが
男性のおよそ5−10%程度とのこと
ホルモンの分泌についてはこちらで詳しく説明してます。
注射が推奨されている理由
男性ホルモンの薬には
錠剤やクリームやシールなどの剤形もありますが
錠剤やクリーム類は吸収が不安定な場合があり
コンプライアンスも不明確なので
医療施設では注射による投与を推奨することが多いようです。
※コンプライアンス・・きちんと薬を服用、使用出来ているかのこと。
ホルモンバランスは
ごく少量でも変動があると
体調に関わってくるので
コンプライアンスは
とっても大事!!!
【FTM】男性ホルモン注射とその種類
男性ホルモンを補うために行う
注射の投与量については
男性の生理的テストステロン濃度を
保つ程度が適切とされていて
多ければ多いほどいいというわけではありません。
テストステロンの検査値では
体内で実際に作用する
フリー・テストステロン数値
が重要になっており、
男性:7.6〜23.8pg/ml
女性:0.4〜2.3pg/ml
が正常値と言われています。
この数値が基準になるのねん。
男性ホルモン注射①エナルモンデポーとテスチノンデポー(同一成分)
成分名:テストステロンエナント酸エステル
・エナルモンデポー(あすか製薬)
薬価:1308円(250mg1ml1管)
・テスチノンデポー(持田製薬)
薬価:1164円(250mg1ml1管)
用法・用量
1回に125−250mgを投与。
投与間隔は2−4週間に1回を行う。
特徴
効果を発揮するまでが早いが
薬剤の消失、効果が失われるのも早いため
投与間隔は2−4週間となっている。
ホルモンバランスが崩れやすい。
※富士製薬のテストロンデポーは
令和2年9月30日で廃止となりました。
薬価(薬だけの値段)は上記価格ですが
通常、自由診療や自費診療だと
診療代や、技術代など含め
クリニック側が金額を設定しているため
金額はクリニックによって異なります。
薬価だけだったら相当安い。
クリニックの相場金額
両者とも
125mg:1,500円〜2,500円(2〜3週間に1回)
250mg:2,000円〜4,000円(3〜4週間に1回)
お次はこの薬が何の治療薬
として認められていて
どんな副作用があるのか・・!
この薬が認められている適用症
・骨髄線維症
・再生不良性貧血
・腎性貧血
・男子性腺機能不全
・造精機能障害による男子不妊症
副作用
・肝機能検査異常
・回復し難い嗄声(させい)
・回復しがたい多毛
・ざ瘡(にきび)
・月経異常
・陰核、陰茎肥大
・性欲亢進
・・・etc
適用症にGID治療の記載がないため
保険適用外の使用とされています。
なので現段階では副作用を活用して
GID治療をしているという感じになります。
保険適用や保険適用外など
まとめた記事はこちらから
男性ホルモン注射②ネビド
成分名:ウンデカン酸テストステロン
・ネビド(シェーリング社:ドイツ)
薬価:???円
用法・用量
1回に1,000mgを投与。
投与間隔は12週間に1回を行う。
特徴
効果を発揮するまでが
エナルモンデポー・テスチノンデポー
より遅い。
緩やかに効果を発揮し、
緩やかに効果が消失するため
ホルモンバランスが崩れにくい。
一度に注入する薬剤が濃いため
注入時、注入後の痛みが強い。
日本ではまだ未承認の薬のため国で定める
薬価、適用症などの情報はありません。
が、ヨーロッパやアメリカではすでに認可され使用されています。
クリニックの相場金額
1,000mg:30,000円(12週に1回)
男性ホルモン注射の比較まとめ
薬品名 | 投与量と間隔 | 特徴 | 金額 |
---|---|---|---|
エナルモンデポー テスチノンデポー | 125−250mg 2−4週に1回 | 効果を発揮するまでが早い ホルモンバランスが崩れやすい | 約1,500〜4,000円 |
ネビド | 1,000mg 12週に1回 | 効果を発揮するまでが遅い ホルモンバランスが崩れにくい 注入、注入後の痛みが強い | 約30,000円 |
通常エナルモンデポーやテスチノンデボーで定期的に様子をみて
本人希望でネビドに移行する治療パターンが多いようです。
ただネビドは先述したとおり日本ではまだ認可されていない薬なので
クリニックによっては対応していないところもあるので確認が必要です。
【FTM】男性ホルモン注射で起こる変化
- 月経停止
- 子宮の萎縮
- 陰核肥大
- 変声
- 筋力増強、体重増加
- 髭、体毛、陰毛の増加
- 皮脂分泌増加
- 頭髪脱毛
- 性欲亢進
一般的には治療を開始してから
数ヶ月で月経がとまり
声が低くなります。
早くて1ヶ月〜6ヶ月ぐらいまでに出現しますが
髭や体毛の増加、体格の変化については個人差があります。
【FTM】男性ホルモン注射で心配な副作用
上記でも薬の副作用の部分は出てきていますが
まとめると・・
- 多血症、血栓塞栓症
- 体重増加・浮腫
- 肝機能障害
- 脂質代謝異常
- 重症なニキビ
- 骨粗鬆症
が、あげられます。
男性ホルモンを注射することによって起こる副作用
・肝機能障害
・脂質異常症
・骨粗鬆症
についてメカニズムなど詳しく書いた記事はこちら
多血症については詳しく書いた記事はこちら
この副作用からの発病を防ぐためにも
定期的な診察、血液検査が必要です。
男性ホルモン注射中副作用で注意したい血液検査項目
副作用で注意する血液検査項目
- ヘモグロビン
- 赤血球数
- ヘマトクリット値
- AST(GOT)ALT(GPT)
- 尿酸値
- コレステロール(HDL,LDL)
- ヘモグロビン・赤血球数・ヘマトクリット値は高いと
多血症の副作用の恐れがあります。 - AST・ALTは肝機能数値なので正常範囲外であれば
肝障害を起こしている可能性があります。 - 尿酸値は高いと痛風になる恐れがあります。
- LDLコレステロールが高く、HDLコレステロールが低い場合
脂質異常症の可能性があります。
副作用のニキビ治療薬に関しては
正しい使い方の記事もあるので
使い方に不安がある方はこちらをどうぞ。
【FTM】実際男性ホルモン注射治療をしている方のブログ
実際に男性ホルモン注射で治療している方のブログの紹介です。
筆者の【dei deiさん】は
エナルモンデポーで治療を続けており
その経過や変化などを記載されています。
その他パスグッズや、埋没生活の実体験など
記載されている記事もありますので
FTMで埋没生活を送っている方
送りたい方は
とても参考になると思いますので
ぜひお立ち寄りを〜
治療に関する書籍『LGBT 専門医が教える心・体そして老後』
GID治療について
- MTF、FTMがホルモン療法で気をつけるべき点
- 個人輸入したホルモン剤の服用についてetc..
日常(職場・学校)での疑問ポイント
- カミングアウトについて
- 同性を好きになった場合どうすればいい
- トランスジェンダーの判断基準は?etc..
LGBTの基礎知識
- LGBTって何?
- LGBT当事者の家族や友人へのサポートetc..
など約33個の議題に対して
Q&A形式で読みやすく書かれている
『LGBT 専門医が教える心・体そして老後』
という書籍がありますので興味がある方はぜひ読んでみてください。
男性ホルモン注射の種類と変化・副作用まとめ
以上が現在日本で行われている
男性ホルモン注射治療です。
注射だけだと実質2種類しかまだ世にでていません。
家からクリニックや病院の距離、拘束される時間
治療費や精神的負担などから
もっと治療の幅が広がらないかと願わんばかりです。
それでもやはり
本来の自分の姿に近づける手段が
構築されつつあるのは喜ばしいことですかね。
また随時薬関連など更新していきます。
ひとまず
以上【FTM】
ホルモン注射の種類と変化・副作用
でした!!